Calle 13(カイエ・トゥレッセ)のResidente(レスィデンテ)こと
René Pérez Joglar(レネ・ペレス・ホグラル)
の初のソロアルバム「Residente」…全13曲計54分…
先ず、
ざっと聴いての第一印象は、
Residente自身のDNA検査の結果に従って、
ルーツとなる(予想外に広範囲だった)各地を訪ねての、
音楽的交流や人的交流をしつつ…
な世界旅行の果てに、プエルトリコに戻ってきて、のこの最後の13曲目
「Hijos Del Cañaveral」
(イホス・デル・カニャベラル/Children of the Canebrake)
を聴きながら、色々と想いを馳せると、
少し感動してウルウルってなっちゃったな…
みたいな感じで、
ルーツを辿ると見えてきた美しくも興味深い全世界的繋がり…
…ある意味ホントに人類皆兄弟、的な…
…まぁ、兄弟は言い過ぎでも、人類皆親戚、なら言い過ぎじゃないのかも…
世間的には雑種よりも純血種のほうが価値が高い的な、
そんな価値観が支配的だったりもするけど…
この13曲目のタイトル…雑木林的な子供達、雑種の子孫達、っていう意味…
…ある意味、雑草魂、という解釈も出来るかも…
で…妹iLeとのコラボ曲でもある…その美しいハーモニーを聴いていると、
…歌声的にも、メロディやリズム等の演奏要素的にも…
雑多に混ざった無価値な雑木林のようなアレでも、
それだからこそ、多くのものが交じり合ったからこそ、生まれた美しさも、
あるんだ…みたいな…
そういうのが、感じられて…そう思うと、止め処なく、
涙が…
客観的には、1曲目から順に聴いてきて、
サイベリア(日本語的にはシベリア)から中国、
そして、アジアと欧州の境目のコーカサス地方、や西アフリカ地域、
そしてフランス等の西欧地域…とDNA的ルーツの地を辿り音楽的コラボを果たし、
再び故郷のプエルトリコに戻ってきて、
ソコで、このアルバム収録曲内では一番、今までのCalle 13の楽曲、
に近い曲が来ることで、
生物学的DNAを辿り旅をして得た音楽的DNAが結集して、
Calle 13の楽曲に繋がっている、
という感じの印象になるんだけれど…この最後の13曲目のには、
単純に「コレまでのCalle 13の楽曲」ってのとは違う、
もっと超越した何かが注ぎ込まれ組み込まれているような…
そういう部分が感じられて…
まぁ、個人的には、心の琴線にかなり触れたな…という感動が得られて…
買った甲斐があったな、
と。
…それはそうと、余談的に、
このResidenteのアルバムで興味が湧くのは、
プエルトリコ出身の彼だからこそDNA検査をした際に、
それだけ多様なルーツが見えてきたのか、
それとも、日本人の自分でも同じDNA検査をしたら、
そういう意外な場所にまで繋がってくるものなのか?っていう部分が、
凄く知りたいな、と思ったというか…
誰か日本のアーティストでも、そういう同じ様にDNA検査をしてみて、
まぁ、その結果が、日本や東アジア地域程度に限定されるような、
意外性のない想定内の範囲のアレだと仕方ないけど、
想定外に、欧州地域やアフリカ地域由来のDNA要素も多く含まれてたり、
ってことなら、Residenteと同様なDNAルーツを巡る旅をしてみても、
また違う面白い音楽的交流が出来て、
面白いものが生まれるかも知れないのにな、と…
そんなことを思ったり。
…さて、
自分が毎週聴いているNPRのAlt.Latinoで先月4月上旬に
「Guest DJ: Residente On Life And Music After Calle 13」
という、ResidenteをゲストDJに迎えての放送回があり…
ちょうどこのアルバムが発売になった翌週くらいの放送で、
このアルバムの制作経緯みたいな部分や、
サイベリアのトゥヴァ共和国や、
アジアと欧州の境目地域であるコーカサス地方や中国、アフリカ他、
自分のDNA検査で示されたルーツの場所を旅して曲を創り、
ソレをフィルムに収めアルバムとドキュメンタリー映画が完成した…
っていう話を聴いて興味が湧いて、
是非買いたい、と思って即買うことに自分は決めたんだけど…
29分ほどの放送時間内で、
興味深い会話の合間にこのアルバムの収録曲が5曲…
放送内での紹介順で、
2曲目「Somos Anormales」(ソモサノルマレス/We Are Abnormal)
8曲目「Guerra」(ゲラ/War)
4曲目「Una Leyenda China」(ウナ・レィェンダ・チナ/A Chinese Legend)
7曲目「Desencuentro」(デセンクェントゥロ/discord , failure to meet)
10曲目「La Sombra」(ラ・ソンブラ/The Shadow)
…という5曲が、ほぼフルコーラスで紹介されているので、
この放送を聴いて何かしら興味が湧くとか惹きつけられるモノを感じた人なら、
100%買って間違いのない、ハズレなく満足出来るアルバムだと思う
…ってことで、
ここで、必聴のオススメ放送として言及しておきます。
まぁ、ここで文字でアレコレ書くより、
実際に曲と本人の生の声を聴いたほうが早くて確実だと思うんで。
…でも一応、各曲の印象を簡単にざっと書き記しておくと…
1曲目「Intro ADN / DNA」
→合衆国建国時の偉人の1人アレクサンダー・ハミルトン(1757-1804)
を描いたミュージカル「Hamilton」等で有名な、
プエルトリコ系俳優で劇作家でラッパーでもあるLin-Manuel Miranda
(リン=マヌエル・ミランダ/1980-)は、
Residente(1978-)の遠い親戚(distant cousin)なんだとか…
そういう縁でのゲスト出演、ってことらしい…。
…因みに、ADNって何?と思ったら…英語で省略するとDNA、
スペイン語で省略するとADN、ってことなんだね…デオキシリボ核酸。
2曲目「Somos Anormales」(ソモサノルマレス/We Are Abnormal)
→この曲の話を聴くまでは、
サイベリアにトゥヴァ共和国ってのが今はあるんだ、
という認識すらなかった…
自分が中学や高校の頃はまだソ連の一部だったから…
自分が大学生になった頃に、ロシア連邦を構成する独立した国に、
なってたっぽい…と25年経った今頃、知ったという…
何だかな…。
3曲目「Interludio Entre Montañas Siberianas」
(Interlude Between Siberian Mountains)
→2曲目でコラボしていて、この3曲目ではメインで独特の声と演奏
を披露しているのは…トゥヴァ語の伝統音楽ミュージシャン達のバンド
Chirgilchinってのがあるらしく…
そのリーダーっぽいIgor Koshkendeyって人の写真を見ると、
何か衣装も含めてモンゴル系の人なのかな…と思って確認すると、
そもそも、トゥヴァ語を話すトゥヴァ人ってのは、
人種的にはモンゴロイドで更には新モンゴロイドと分類される、
人達なんだとか…なので、
モンゴル人っぽく見えるのも当然なのか…みたいな…。
4曲目「Una Leyenda China」
(ウナ・レィェンダ・チナ/A Chinese Legend)
→中国を想起する系のサウンドをあれこれ組み込んだ、
イメージ系コラボ曲だな、と。
5曲目「Interludio Haruna Fati」(Haruna Fati Interlude)
→Haruna Fatiってのは、ガーナ辺りのミュージシャンというか歌手らしい。
6曲目「Dagombas En Tamale」(Dagombas in Tamale)
→西アフリカのガーナ北部周辺にダゴンバっていう民族が、いるんだとか。
タマレはガーナの北部州の州都だとか。で、Haruna Fati
って人も含めてそのダゴンバ族の民族音楽歌手的な人達とコラボした、
と。
7曲目「Desencuentro」(デセンクェントゥロ/discord , failure to meet)
→フランス人女性のインディポップ歌手SoKoとのコラボ曲。
物悲しげだけど、綺麗なハーモニーの曲だなってのが全体的な印象だけど、
最後、いきなりブチッって途中で途切れるように突然終わるから、驚くよね…
あれ?壊れたのかな?収録ミスかな?…みたいな。
8曲目「Guerra」(ゲラ/War)
→コーカサス地方のナゴルノ・カラバフを訪れていた際に、そこは、
アルメニアとアゼルバイジャンとの対立の火種になっている紛争地域らしく、
軍の爆撃とかがあって避難したりとか、
色々あった中で、ジョージアとか南オセチアとかチェチェンとか、
コーカサス地方内で色々と場所を変えながら、曲を録音したんだとか…。
9曲目「Apocalíptico」(アポカリプティコ/Apocalyptic)
→北京の歌声と、
ロンドンの教会寺院とバルセロナのカタルーニャ音楽堂のオルガン音と、
をミックスして創った曲だとか…そういう意味では、
東洋と西洋が出会った系の曲とも言えるんだけど、でも、曲調は、
少しインダストリアル系な近未来系な雰囲気漂うアレだったりするんで、
言われなかったら、中国要素が入っているとは気付かないかも…
…言われなければ北京オペラの歌手が歌ってるとは思わないよね多分…
かつ、コレは、
北京の近代化の果ての大気汚染、
な状況にインスピレーションを受けて創った曲…なんだとか。
10曲目「La Sombra」(ラ・ソンブラ/The Shadow)
→アフリカ大陸サハラ砂漠西部が活動の範囲のベルベル人系の遊牧民トゥワレグ
のギタリストBombino(ボンビーノ)とコラボした曲。
このギタリストはニジェール出身の人みたいだけど、
曲はブルキナファソ滞在時に創った曲だとか…っていうか、この曲を聴くまで、
西アフリカのブルキナファソなんて、
自分の人生に何の接点もない国だったから、それだけで興味津々だったりも。
11曲目「Milo」(ミロ)
→ガーナ滞在時に見た夢にインスピレーションを受けて創った曲で、
ミロってのは、息子に因んだ曲名なんだとか…息子の名前がミロなのかな…。
12曲目「El Futuro Es Nuestro」
(エル・フトゥロ・エス・ヌエストゥロ/The Future Is Ours)
→聴いての第一印象は、ジプシー音楽、ロマ音楽みたいなブラスバンド
とコラボしてるな…と…自分の中では、ロマ音楽ってので、
最初に連想したのは、前にCDを買って聴いた、
マケドニアの国民的大スター歌手
Esma Redžepova(エスマ・レジェポヴァ/1943-2016)
と、同じくロマの血を引くマケドニアのサクソフォン奏者
Ferus Mustafov(フェルース・ムスタフォヴ)
だったけれど、この曲でコラボしているのは、同じバルカン半島だけど、
今のボスニア・ヘルツェゴビナ出身のゴラン・ブレゴヴィッチ
というミュージシャン。
…最後の13曲目は最初の第一印象のところで書いたんで…
ってことで、このアルバムの全13曲計54分で、
世界一周ってわけにはいかないけど、
シベリア、中国、西アフリカ、アジアと欧州の境界地域、
西欧…そしてプエルトリコやNYで最終的にCDを仕上げているわけで…
ちょっとした、音楽的世界旅行…または音楽的交流旅行…
を満喫出来る作品になっていて…
コレまでのCalle 13の音楽のルーツを別観点から辿り探る旅でもあり、
同時に新しいモノを生み出す旅でもあり…
興味深い、いい作品を入手出来てよかったな、というのが正直なところ。
日本で公開される日が来るのかは分からないけれど、
このアルバムの旅のドキュメンタリー映画も、日本でも公開されるのなら、
是非、観に行きたいな…
と、個人的には、ソレも楽しみに心待ちにしています。
…最後に一言…
やっぱ、Residenteは、歌声も見た目も生き様も、カッコイイな、と。